Apogee Clearmountain’s Dance は、デヴィッド・ボウイ「Let’s Dance」に刻まれた独特のステレオ・ディレイを再現する革新的なプラグインです。世界的エンジニア ボブ・クリアマウンテン が偶然のひらめきから生み出したこのディレイは、以降の音楽シーンに多大な影響を与えてきました。その唯一無二のサウンドが、ついにDAW環境で自在に扱えるようになりました。
カスケード状に広がるピンポンディレイで、魅惑的なステレオテクスチャと思わず耳を傾けたくなるようなリズムパターンを生み出します。入力された音声は一度バッファに記録され、設定した間隔で再生。ドライ信号はステレオバランスを保持し、ウェット信号はモノにまとめてハードパンされることで独特のピンポン効果を実現します。モノラル信号でも、ディレイのカスケードでステレオに広げることが可能です。
Clearmountainが愛用したデュアル・テープヘッドの質感を忠実に再現。Degradeノブでテープの経年変化をシミュレートし、リピート音の硬さを和らげたり、フラッター感や有機的な揺らぎを追加できます。デジタルでは得られない、温かみと奥行きのあるサウンドを実現します。
従来のテンポ同期に縛られない自由なディレイを可能にするランダマイズ機能を搭載。Offsetノブで左右チャンネルのタイミング差を調整し、Skewノブでスイング感をコントロール。偶発性のある生き生きとしたモーションを自在に操ることができます。
ボブ・クリアマウンテンによるバックグラウンド・ストーリー
デヴィッド・ボウイのアルバム『Let’s Dance』のタイトル曲を録音し終えた後、プロデューサー兼ギタリストのナイル・ロジャースがこう言いました。「このギタートラック、ちょっと退屈に感じるんだ。スラップディレイか何か足してくれない?」
私は「もちろん、いいよ」と返答。
当時、Power StationのスタジオにはStuder B67という1/4インチのステレオテープマシンがあり、“ピンポン”スタイルのステレオディレイ用にパッチしていました。テンポにシンクしていない設定で、しかもリターン信号がミックスに対して異常に大きかったんです。再生ボタンを押した瞬間、ディレイが大音量で、混沌とした感じで飛び出してきました。
慌ててリターンフェーダーを下げようとしたところで、ナイルとデヴィッドがすかさず止めたんです。
「いや、それ最高! そのままで!」
僕はミスだと思っていたそのディレイが、彼らにとってはまさに「求めていたサウンド」だったんですね。そのサウンドは最終的にギターの特徴的な音になり、私はボーカルにも同じディレイを加えました。
長年にわたって、多くのミキサーやプロデューサーたちが「あのディレイが何だったのか」を再現しようとしてきました。そこでApogeeが、「それをプラグインとして再現したら面白いんじゃないか?」と思いついたんです。僕が反対する理由なんて、あるわけがありませんよね。
ボブ・クリアマウンテン
デビッド・ボウイの「レッツ・ダンス」ブルース・スプリングスティーンの「Born in the U.S.A.」ブライアン・アダムス「カッツ・ライク・ア・ナイフ」、ローリング・ストーンズ「 刺青の男」をはじめ無数の名盤を手掛けてきた伝説的なエンジニア。