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コンプよりも自然なアタック遠近法

立体感のあるミックスがしたい

自分の曲をミックスしていると、普段聞いている曲に比べてどこか薄っぺらいサウンドで立体感がないように聞こえてしまいます。

耳元でグルーヴを生み出すような輪郭のくっきりしたビート。カッティングしていても少し離れて聞こえる奥行きのあるギター。

ミックスのプロはどのようにして立体的で迫力のある楽曲に仕上げているのでしょうか?

ダイナミクスはコンプレッサーだけじゃない?

ミックスにおいて音を前に出し近くで目立たせる方法の1つとして、コンプレッサーによるダイナミクス処理がありますよね。

前に出したい、目立たせたいトラックにはコンプレッサーを使用することで、音量のばらつきを少なくした上で音量を引き上げます。また、アタックタイム(コンプレッサーがかかり始めてから圧縮率Ratioが設定値に達するまでの時間)を利用することで、パンチのある音にして目立たせることもあります。

しかし、コンプレッサーはあくまで音量的に飛び出た音を圧縮するものです。そのため、意図していた音のキャラクターではなくなって迫力はあってもイメージとは違うサウンドになってしまうことが多々あります...。

他にも奥行きを演出するためにリバーブをかけたり、EQのHighを削ったり、EQのHighをブーストすることで近さを演出することもありますが、これらは本来イメージしていた音のキャラクターを犠牲にしてしまうことが多いですよね。

そこで、今回はこのような悩みを解決するため、トランジェントについて勉強しました!

トランジェントとは

トランジェントとは、音の発音直後、数ms部分の音量のことを指します。つまり、音の輪郭です。例えば以下のようなイメージです。

  • ・スネアドラムのヘッドにスティックが当たる音
  • ・拍手するとき、手のひらがぶつかり合う音
  • ・ギターのピックが弦に当たる音

このような音の輪郭は耳元で聞くとよく聞こえ、遠くで聞くとぼんやりとして聞こえますよね。

つまり、トランジェントの大小によって、人間が感じる音の距離感が変わります。

トランジェントプラグインを使うといいこと

それでは、トランジェントを処理するとコンプレッサーに比べてどのような利点があるのでしょうか?

先ほども述べた通り、コンプレッサーは飛び出た音を潰すことで音量のばらつきを減らし音量の底上げをすることにより、その音を前に出すような演出ができます。そして、音の頭であるアタックタイムでは完全には潰されないため、発音の瞬間が際立って聞こえます。しかし、その代償として必要以上にのっぺりと平たい音になったり、不自然な音量変化を伴います。

トランジェントを処理するだけであれば、1音1音の発音直後のみ音量が変わり、全体的に音量の変化やそれに伴う音色の変化は起こりません。

また、多くのトランジェントプラグインは、発音だけでなくサステイン(音の持続、減衰の様子)もデザインできます。これにより、音のキレが悪い、減衰が早すぎるといった問題にも適用することができます。

それでは、どのようにトランジェントを処理するのか、実際に3つのプラグインを紹介しながら書いていきます。

トランジェントプラグイン 1 Waves「Smack Atack」

Waves「Smack Atack」は多機能でありながら、初心者にも優しいプラグインです。

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波形とグラフ

元の音源の波形とそれに対する感度(どの音量を超えたらトランジェントとして感知するか)が一眼でわかります。トランジェントで増大した音量を瞬時に戻すのか、緩やかに戻すのかなどの音量変化の様子もわかりやすいのが特徴です。

どのプラグインを使う時でも、耳で聞く音に起こっている変化をグラフで確認できるのはありがたいですよね。

さらにトランジェント処理は大胆な変化だけではなく、微妙なニュアンスのデザインになるため、このグラフがあることで初心者にも優しいプラグインだと言えます。

3ステップでトランジェントをデザイン

まずは大きなノブでトランジェントの音量を調節できます。そして、一瞬増大して音量を戻すまでにおける音量変化の形状、またそれにかける時間(Duration)を調節するだけで音の輪郭をデザインすることができます。また、サステインも同様に調節してみてください。

元のニュアンスはそのままに

さらに便利なのが、Dry&WetのMIX機能です。

トランジェントとサステインをデザインしてみても、不自然に感じてしまったり、元のニュアンスが損なわれたと感じることもあります。

そんな時に元の音とどのくらいの比率で混ぜ合わせるかを考えることで、より自然なトランジェント処理ができます。

クリップをガード

トランジェントやサステインを増大すると、当然その部分は音量が増し、0dBに達するとクリップしてしまいます。それに対し、何も処理しないのか、適度に歪ませるのか、あるいは0dBに達しないようリミッターをかけるのか、好きなモードを選択することができます。

トランジェントプラグイン 2 FLUX::「BitterSweet Pro v3」

FLUX::「BitterSweet Pro v3」は処理を施す周波数帯域を限定できるダイナミックEQのようなトランジェントプラグインです。

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ある帯域はBitterに, 別の帯域はSweetに

例えば、レコーディングされたドラムのキックの音について、録音時のマイクが近すぎてビーターがヘッドに当たる音ばかり目立ってしまう。しかし、低音成分は耳を押すようなアタックがほしい...。

そんな時には、キックの打音が鳴っている周波数帯、低音成分の周波数帯をそれぞれ選択して処理をすれば、打音は適度に弱くなり、低音成分は手前に引き出すことができます。

キリッとor甘く?シンプルなUI

また、BitterSweetの2つ目の大きな特長は、グラフィックが美しく変化するUIです。左側の大きなノブをbitter(キリッと)かsweet(甘く)かに回すことによって、真ん中のグラフィックも変化します。このような遊び心も創造性を掻き立てる要因になりますよね。機能面で迷った場合は、自分がつい使いたくなるようなUIデザインのものを選んでしまいます。

音割れすらも美しく

もしもトランジェントやサステインの処理によってクリップノイズが発生した場合に、どのような歪みにアレンジするか選択することができます。

トランジェントプラグイン 3 Sonnox「Envolution」

Sonnox「Envolution」は徹底的にトランジェントデザインができる万能なプラグインです。

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とにかく変幻自在なトランジェント&サステイン

トランジェントの音量変化の緩やかさも、音量を増加したまま保つ時間もATTACK、HOLD、RELEASEのパラメータで緻密に形状をデザインすることができます。

この3つのパラメータを巧みに設定すれば理想のトランジェントがデザインできそうですね。

Dry:Wetの比率をEQのように

Envolutionは単に全体的なDry:Wetの比率を変えるだけでなく、帯域ごとにその比率を変えることができます。これにより、激しくトランジェントを増したい帯域、少しだけ増したい帯域のそれぞれに最適なトランジェント処理を両立することができます。

どこが変化したの?ピンポイントでチェック

「BYPASS」の機能を持っていて Before & After が聴き比べできるプラグインはよくありますよね。Envolutionはさらに「DIFF」の機能でBeforeとAfterの差分のみ聴くことができるのです。これにより、聴き比べが難しいトランジェントでも、自分の操作により何が変化したのか明確に理解することができますね。

遠くにいても存在感のあるトラック

トランジェント処理を行った結果、奥行きは感じられるけどあっさりとして物足りないということも考えられます。そんな時はWARMTHによって適度な存在感を増すことで、「遠くにいても存在感のあるトラック」ができそうです。

自分にはどれがオススメ?

3つのトランジェントプラグインについて紹介しましたが、どれを使用したらいいのかそれぞれの特徴を踏まえて考えてみました!

Smack Atack:波形やグラフが充実していてトランジェントの形が目に見えるので、理想のトランジェント処理を効率良く実現したい人にオススメ

BitterSweet Pro v3:帯域を限定したトランジェントも可能でありシンプルなUIが特徴的なので、音のキャラクターデザインも含めて直感的に使用したい人にオススメ

Envolution:多数のパラメータによってできることが豊富であるため、アタックの調節からキャラクター作りまでじっくりと着実にやりたい人にオススメ


他にもそれぞれのプラグインの活用方法があるかもしれません。あなたの目的や作業の仕方に応じて、自分に合うものをぜひ考えてみてください!

まとめ

今回はトランジェントの意義と3つの代表的なトランジェントプラグインの特長についてのご報告でした。

これからは音のキャラクターや自分のイメージを犠牲にすることなく、奥行きのあるサウンド作りができそうですね!

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

記事で紹介した製品

Waves

Smack Atack

サウンドのアタック、サステインのトランジェントを音量、形状、長さから個別にデザインし、精密な調整から荒々しいエフェクティブな使い方までカバー

トランジェント

FLUX::

BitterSweet Pro v3

特定周波数帯のみを処理することで、柔軟なトーン/アタック調整が可能なダイナミックEQ - トランジェント・デザイナー

トランジェント

FLUX::

BitterSweet Pro v3

トランジェントおよびサステイン成分を個別に処理することで、楽器を始めとしたオーディオ素材のエンベロープを徹底的に再成形することが可能

トランジェント