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トランジェントとは?

トランジェントとは? コンプよりも自然なアタック遠近法


DTMerのみなさん、トランジェントって言葉をご存知でしょうか?

「プロの人が語っていたけれど意味がわからない」「音圧のあるミックスができるって聞いたけど、なぜ?」「コンプでアタック感を出すのと何が違うの?」

そんな疑問を持つ方はたくさんいると思います。というのも、スタッフルーキーを名乗る僕も日頃からミックスや楽曲制作を行うDTMerの1人ですが、上で挙げたような疑問を持っていたのです。

そこで、今回は「トランジェントの意味」「トランジェントについて考えるメリット」「おすすめのトランジェントプラグイン」について先輩から聞いてきました!

「専門的な話になると理解できない.....」「本当に自分に必要なこと?」と不安になってしまう方も大丈夫です!今回は僕のような初心者でもわかりやすいように解説してもらいました!

実はミックスにおいてトランジェントを考えることは難しいことではなく、プラグインの使い方も簡単なんです!

トランジェントとは?

トランジェントとは、音の発音直後、数ms(ミリ秒)部分の音量のことを指します。つまり、音の輪郭です。例えば以下のようなイメージです。

・スネアドラムのヘッドにスティックが当たる音
・拍手するとき、手のひらがぶつかり合う音
・ギターのピックが弦に当たる音

このような音の輪郭は耳元で聞くとよく聞こえ、遠くで聞くとぼんやりとして聞こえますよね。

つまり、トランジェントの大小によって、人間が感じる音の距離感が変わります。

コンプではできない!トランジェントプラグインでできること

それでは、トランジェントを処理するとコンプレッサーに比べてどのようなメリットがあるのでしょうか?

コンプレッサーは飛び出た音を潰すことで音量のばらつきを減らし音量の底上げをすることにより、その音を前に出すような演出ができます。

また、コンプレッサーは瞬時に音を潰すのではなく、アタックタイムを0msに設定しても厳密には数ms遅れて音が潰れはじめます。そして、音の頭であるアタックタイムでは完全には潰されないため、発音の瞬間が際立って聞こえます。しかし、その代償として必要以上にのっぺりと平たい音になったり、不自然な音量変化を伴います。

一方で、トランジェントを処理するだけであれば、1音1音の発音直後のみ音量が変わり、全体的に音量の変化やそれに伴う音色の変化は起こりません。

また、多くのトランジェントプラグインは、発音だけでなくサステイン(音の持続、減衰の様子)もデザインできます。これにより、音のキレが悪い、減衰が早すぎるといった問題にも適用することができます。

トランジェントを処理するとミックスはどう変わる?

「音圧がある」と感じられるミックスの中には「近くで音が鳴っているように感じられ、輪郭がくっきりしている」楽曲が多くはないでしょうか?

冒頭でご説明したように、トランジェントと音の距離感は非常に似た考え方ができます。

目立たせたい音だからこそ、コンプを使って音のキャラクターが変わってしまうのは困りますよね。そこで、トランジェントプラグインを使うことにより音のキャラクターを変えないままアタック感を出すことができるのは、ミックスにおける大きなメリットだと思います!

それでは、どのようにトランジェントを処理するのか、実際に3つのプラグインを紹介しながら書いていきます。

トランジェントプラグイン1 Waves「Smack Atack」

Waves「Smack Atack」は多機能でありながら、初心者にも優しいプラグインです。

Waves Smack Atack

波形とグラフ

元の音源の波形とそれに対する感度(どの音量を超えたらトランジェントとして感知するか)が一眼でわかります。トランジェントで増大した音量を瞬時に戻すのか、緩やかに戻すのかなどの音量変化の様子もわかりやすいのが特徴です。

どのプラグインを使う時でも、耳で聞く音に起こっている変化をグラフで確認できるのはありがたいですよね。

さらにトランジェント処理は大胆な変化だけではなく、微妙なニュアンスのデザインになるため、このグラフがあることで初心者にも優しいプラグインだと言えます。

3ステップでトランジェントをデザイン

まずは大きなノブでトランジェントの音量を調節できます。そして、一瞬増大して音量を戻すまでにおける音量変化の形状、またそれにかける時間(Duration)を調節するだけで音の輪郭をデザインすることができます。また、サステインも同様に調節してみてください。

元のニュアンスはそのままに

さらに便利なのが、Dry&WetのMIX機能です。

トランジェントとサステインをデザインしてみても、不自然に感じてしまったり、元のニュアンスが損なわれたと感じることもあります。

そんな時に元の音とどのくらいの比率で混ぜ合わせるかを考えることで、より自然なトランジェント処理ができます。

クリップをガード

トランジェントやサステインを増大すると、当然その部分は音量が増し、0dBに達するとクリップしてしまいます。それに対し、何も処理しないのか、適度に歪ませるのか、あるいは0dBに達しないようリミッターをかけるのか、好きなモードを選択することができます。

→Waves「Smack Atack」の購入はこちら

トランジェントプラグイン 2 FLUX::「BitterSweet Pro v3」

FLUX::「BitterSweet Pro v3」は処理を施す周波数帯域を限定できるダイナミックEQのようなトランジェントプラグインです。

FLUX:: BitterSweet Pro v3

ある帯域はBitterに, 別の帯域はSweetに

例えば、レコーディングされたドラムのキックの音について、ビーターがヘッドに当たる音をもっと目立たせたい。しかし、低音成分は目立たせたくない。

そんな時には、キックの打音が鳴っている周波数帯、低音成分の周波数帯をそれぞれ選択して処理をすれば、打音は適度に強調され、低音成分はそのまま、もしくは抑えることができます。

キリッとor甘く?シンプルなUI

また、BitterSweetの2つ目の大きな特長は、グラフィックが美しく変化するUIです。左側の大きなノブをbitter(キリッと)かsweet(甘く)かに回すことによって、真ん中のグラフィックも変化します。このような遊び心も創造性を掻き立てる要因になりますよね。機能面で迷った場合は、自分がつい使いたくなるようなUIデザインのものを選んでしまいます....!

音割れすらも美しく

もしもトランジェントやサステインの処理によってクリップノイズが発生した場合に、どのような歪みにアレンジするか選択することができます。

→FLUX::「BitterSweet Pro v3」の購入はこちら

トランジェントプラグイン 3 Sonnox「Envolution」

Sonnox「Envolution」は徹底的にトランジェントデザインができる万能なプラグインです。

Sonnox Envolution

とにかく変幻自在なトランジェント&サステイン

トランジェントの音量変化の緩やかさも、音量を増加したまま保つ時間もATTACK、HOLD、RELEASEのパラメータで緻密に形状をデザインすることができます。

この3つのパラメータを巧みに設定すれば理想のトランジェントがデザインできそうですね。

Dry:Wetの比率をEQのように

Envolutionは単に全体的なDry:Wetの比率を変えるだけでなく、帯域ごとにその比率を変えることができます。これにより、激しくトランジェントを増したい帯域、少しだけ増したい帯域のそれぞれに最適なトランジェント処理を両立することができます。

どこが変化したの?ピンポイントでチェック

「BYPASS」の機能を持っていて Before & After が聴き比べできるプラグインはよくありますよね。Envolutionはさらに「DIFF」の機能でBeforeとAfterの差分のみ聴くことができるのです。これにより、聴き比べが難しいトランジェントでも、自分の操作により何が変化したのか明確に理解することができますね。

遠くにいても存在感のあるトラック

トランジェント処理を行った結果、奥行きは感じられるけどあっさりとして物足りないということも考えられます。そんな時はWARMTHによって適度な存在感を増すことで、「遠くにいても存在感のあるトラック」ができそうです。

→Sonnox「Envolution」の購入はこちら

自分にはどれがオススメ?

3つのトランジェントプラグインについて紹介しましたが、どれを使用したらいいのかそれぞれの特徴を踏まえて考えてみました!

Smack Atack:波形やグラフが充実していてトランジェントの形が目に見えるので、理想のトランジェント処理を効率良く実現したい人にオススメ

BitterSweet Pro v3:帯域を限定したトランジェントも可能でありシンプルなUIが特徴的なので、音のキャラクターデザインも含めて直感的に使用したい人にオススメ

Envolution:多数のパラメータによってできることが豊富であるため、アタックの調節からキャラクター作りまでじっくりと着実にやりたい人にオススメ


他にもそれぞれのプラグインの活用方法があるかもしれません。あなたの目的や作業の仕方に応じて、自分に合うものをぜひ考えてみてください!

まとめ

今回はトランジェントの意味とミックスにおける役割、3つの代表的なトランジェントプラグインの特長についてのご報告でした。

これからは音のキャラクターや自分のイメージを犠牲にすることなく、迫力のあるサウンド作りができそうですね!

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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