楽曲のアレンジをしていて、どこか味気のないトラックに悩むことはありませんか?
シンセや音源でフレーズを鳴らすところまではいいものの、今一つ物足りない...
あるいは、ボーカルのミックスが終わったあとでも、ある1フレーズだけ奇抜な演出をしてみたいと感じたり。
今回は、そんな遊び心のあるアレンジの一つとして、「音を壊す」という方法について勉強してきました!
音を壊すって聞くと音楽が破綻するような気がしてしまいますが、やり方によっては個性的でかっこいい音を作り出すことができます。
「音を壊す」ということの定義は明確に決まってはいませんが、ディストーションやオーバードライブ、ファズで歪ませてみたり、アンプやスピーカーに通してみたりすることがわかりやすい例だと思います。(僕は、シンセや鍵盤楽器でも敢えてギターアンプシミュレーターに通してみるという方法を頻繁にやっています!)
そこで、今回は音を壊すのにおすすめなエフェクトプラグインを紹介&解説してもらいました!
- とにかく細かく「歪み方」をカスタマイズ
MDMX Distortion Modulesには3つのディストーションプラグインが含まれます。
・Screamer
・OverDrive
・Fuzz
UIの画像をご覧いただくとお分かりかもしれませんが、それぞれのプラグインに数多くのパラメータがあり、様々な角度から「歪み」を調整することができます。以下では、3つの違いや特長をご紹介します。
- 適度な歪みでエレキギターのようなサウンドに「Screamer」
Screamerは「過大入力で割れてしまう現象がエフェクトとしてかっこいい」というニュアンスで、音の飽和による自然な歪みが得られます。
「MIX」のつまみを0にすると歪みがわずかに感じられる程度、しかし100に近づければ(GAINやINPUTがある限り)ガッツリ歪ませることもできます。また、ベースなどは完全に歪ませると低音がスカスカになってしまいがちですが、これも原音とのMIXによって解消できます!
「TONE」の設定によって中低域が膨らんだり、高域が強く煌びやかになったりするので、使用するトラックが楽曲の中で担う役割によって、柔軟に対応できそうです。
- カスタマイズによる歪みの可能性「OverDrive」
こちらの歪み方はScreamerと似ていてOverDrive系です。
しかし、Screamerに比べてパラメータが多く、より詳細に歪みをデザインすることができます。(その分コントロールするのが難しくもあります...)例えば、OverDriveの面白いところは「PUNCH / RIDER」のスイッチがあるところです。
PUNCH: 瞬間的に歪みを増加させ、パンチを加える
RIDER: 設定したThresholdを基準に歪みの量が変化する→強い音は激しく歪み、弱い音はマイルドに歪みます。たしかに、クランチギターでも弱いピッキングと強いピッキングで歪み方が変わりますよね。
- ほどよいビリビリ感も圧倒的な破壊も「FUZZ」
FUZZは過大な入力に対して飛び出た波形をハサミで切るようにカットするため、ビット数を落としたようなビリビリとした歪みが生じます。この点が、他2つとの最大の違いになるかと思いました。
とにかく元の音がわからなくなるくらい歪ませて、強烈なノイズを発生させることもできてしまいます!
また、「OCTAVE」は歪みとともに上下オクターブの音を付与することができるため、他の2つとは違う角度でトラックのキャラクター作りができます。
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- まずは音を入れてみよう
Futzboxはスマホのスピーカー、メガホン、音の出るおもちゃのスピーカーなどあらゆるスピーカーのシミュレーションだけに留まらず、バケツや瓶の中での音の響きまでも再現することができます。
とにかくたくさんのプリセットが用意されているので、「具体的なイメージはないけど遊び心や奇抜さを持ったトラックにしたい」と思ったら片っ端から試してみるのも良いですね!
- ディストーションやEQではない、本物の再現
Futzboxを使わなくても、例えばEQでローとハイをカットし程よく歪ませることでテレフォン風な音作りをすることは可能です。
しかし、Futzboxは実際の音響計測によってそれぞれのスピーカーの※IRが使用されているので、限りなく本物に近く、バリエーションも豊富なのです!
要するに、McDSPは旧式電話の受話器から鳴らしたり、トランシーバーから鳴らしたり、掃除機のホースを通してみたり...一つ一つ丁寧に音響を計測したということですね...。そう考えると、Futzboxは彼らの努力と遊び心の賜物です!
※IR(インパルス・レスポンス)とは...ある空間の音響特性を捉えるために測定されたデータ
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- 明確に定義できない3つのつまみ
「MIX」のつまみは原音とエフェクト使用後の音の割合ですが、それ以外の「CRUSH」「CRUNCH」「DARKNESS」は「歪みの量」や「フィルターをかける帯域」など一言で言い表すことができません。そのため、つまみを回して効果を確かめながら自分の望む音を探すというのがこのプラグインの使い方かもしれません...。
- ドラムのフレーズに使ってみた
Devil-Loc Deluxe 5の魅力をお伝えするにはサンプルをお聞きいただくのが一番だと思い、使用例をご用意しました。使用時は「DARKNESS」のつまみを0~10でリアルタイムに動かしてみました!「CRUSH」「CRUNCH」「MIX」は5:5:10に設定しています。
Before
After
今回の素材ではこのような効果が得られましたが、同じパラメータ設定でも使用するフレーズによって異なる印象を受けるかと思います!(例えばリバーブをたっぷりかけたボーカルの後に使ってみたらゲートのようなリバースのような効果を発揮しましたよ..!)
音を壊す方法として歪みやスピーカーシミュレーターなどのエフェクトプラグインをご紹介しましたが、実はウェーブテーブルシンセも音を壊すことができるのです。
ウェーブテーブルシンセとはサンプルとして音声ファイルを読み込み、そのサンプルの特定の箇所をループして再生したものを音源として扱うことのできるシンセのことです。例として、Spectrasonics「Omnisphere」やWaves「Codex Wavetable Synth」が挙げられます。
このようなシンセにおいて、ピッチを上下させたり、極端に短いスパンをループさせたり、さらにはLFOで時間変化をつけたりすることで音を壊すというアイデアもありますね。
トラックをエフェクトプラグインで壊す時とは違い、「面白い音でトラックを作りたい」というようにトラックを作成する段階での破壊もアイデアの一つとして考えてみると楽曲制作の幅も広がりそうですね!
今回は遊び心のあるアレンジ方法の1つとして音を壊す方法をご紹介しました。
綺麗な音、シンプルなキャラクターのアレンジも魅力的ですが、時にはわざと音を汚したり壊したりすることで、想像していなかったトラックメイクができることもありそうです。ぜひ、皆さんのお好みの「破壊法」を見つけてみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!